どこまでも明るい ”歌う” よそ者ロシアからの移住者楽譜も読めないのに、アメリカを代表する作曲家になったアーヴィング・バーリンという人がいます。彼は、幼い頃に、生まれ故郷のロシアを離れ家族と逃げるようにしてアメリカに移住してきました。家族の誰も 英語がわからず、頼りになる人脈もなく..移住した当初は家も借りられず、家族6人で体を寄せ合いながら 橋の下で寝泊まりする日々が続きます。ようやく見つけた “暗い地下室” でアーヴィング家の貧しい暮らしが始まりました。無学・貧困。最低の生活‥言葉もさっぱり通じない異国でバーリンは、必死になって働きました。レストランで皿洗いをしたり、歌を歌って小銭を稼いだり・・夜は、ろうそくの灯りの下で辞書を引きながら英語を勉強しました。そんな苦しい生活の中でも、彼はいつも歌っていたのです。心の中にあふれるメロディーを、鼻歌で口ずさみながら「いつか、自分の歌でみんなを笑顔にしたい」それがバーリンの夢だったからです・・暗い時代だから..「陽気な歌」を!彼は同時代のどの作曲家よりも多くの曲を作りますが、学校には、わずか2年間しか通っていません。生涯、音楽教育を受けたこともなく、楽譜を読むことすらできませんでした。けれども彼は、「僕のハッピーな歌なら みんなもきっと好きになるよ!」そう強く信じていたのです。とはいえ、現実は厳しい・・。彼の歌は、なかなか売れませんでした。それでも諦めないバーリンは、自分の歌を聞いてもらうために出版社を一軒一軒 訪ねて歩きました。時には、冷たい言葉で断られることもありました。そしてついに・・彼の歌が、ラジオで流れたのです。「人生の転機」人々は、その美しいメロディーに心を奪われ、彼の歌はまたたく間にアメリカ中に広がっていきました。この頃の気持ちは、彼の “もっとも有名な歌” のひとつ『 God Bless America 』に表現されています。バーリンの作曲法「大丈夫さ。だって、こんなに好きなんだから!」楽譜を読めなかったバーリンは、自分の音楽秘書に向かってメロディをハミングして聞かせ、それを楽譜に書き取ってもらい、当時の最先端のメディア「ラジオ局」に安いお金で買い取ってもらい始めたのです。プロとしての最初の曲は 33セントにしかなりませんでした。彼はそれでくじけてしまったでしょうか?とんでもない!彼は、優れたソングライターとしての自分を信じていましたから、くじけることなく、次々に作曲を続けました。そして、初めてバーリンの曲がラジオから流れて3年後‥彼は、アメリカの音楽の新時代を開くことになった『 アレクサンダーのラグタイム・バンド 』を書きました。ちょっと違いますね・・ ”口ずさんだ” のです。この曲の発表が、アーヴィング・バーリンの名声と栄光の新時代の幕開けになりました。このときから “シンガーソングライター”「アーヴィング・バーリン」の名前が知られるようになったのです。彼は、この一曲で25万ドルを一挙に手にし、巨万の富が彼のもとになだれこんでくるようになったのです。人々が音楽に飢えていた時代、バーリンの明るく希望に満ちた歌が人々の心に びんびん響いたのです。彼は生涯、楽譜を読むことはできませんでしたが、”一生 すばらしい音楽を作ることはできる” と強く信じていました。そして本当に彼は、すばらしい音楽を作り続け何百万ドルというお金が彼のもとになだれこみ続けたのです。彼のもっとも有名な作品は、おそらく『 これが軍隊だ 』という曲ですが、この曲は、なんと2,500万ドルの収入を生み出してくれたのです。・・当時の2,500万ドル。現在の価値換算では、およそ1千億円くらいでしょうか?しかし、彼はこれだけの売り上げを叩き出した曲の印税を”1ペニー” たりとも受け取らなかったのです。世界中が ”戦争の空気” に包まれていた時代に『 これが軍隊だ 』の印税 “全額” を、軍の「非常事態救済基金」に寄附したのです。「必ず成功できる」と自分を信じたチカラは、結果として個人的な“満足感”を生んだだけではなく、具体的に数百万、何千万という「お金」となって戦乱で苦しむ、たくさんの被災者たちを救済する力になったのです。どんな才能であっても、それが好きなのであればあきらめずに続けることの勇気を、彼は教えてくれるようです。アーヴィング・バーリンが 一生の間に生み出した曲の数は、およそ 1,800曲。そのすべてがヒットしたわけではありません。むしろ、誰にも注目されずに忘れられた歌のほうが多いわけで1,700曲以上は、よほどのマニアでなければ知ることもないでしょう。でも、だからこそ..アーヴィング・バーリンの生涯はたくさんのことを教えてくれるのです。私たちも、自分を信じて ”一歩ずつ” 進んでいきましょう。あなたの笑顔が、家族みんなの幸せにつながってあなたの家族の笑顔が、たくさんの人を幸せにしますように。デイリー音声「Day163-1082」連動記事: